Vol.2
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東北TOP


Vol.1 はじまり

Vol.2 名神の悲劇

Vol.3 セロー復活

Vol.4 再出発

Vol.5 降臨

Vol.6 東北へ

Vol.7 青森→十和田

Vol.8 青森ねぶた

Vol.9 青森→八幡平

Vol.10 八幡平→秋田

Vol.11 秋田→敦賀

Vol.12 敦賀→京都

Vol.13 京都→徳島




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まだ1日目(つづき)

名神高速の悲劇


さて、19時過ぎに家を出発し、みんなに先行してひた走り。
台風が近付いているからか、鳴門大橋の上は相変わらず強風で注意が必要だ。
20時頃、淡路SAで休憩。ここまでは順調。
でもセローでの高速走行はハンドルから伝わる振動で手のひらがビリビリする。
ドーナツを2個買って1個食って出発。
第二神明から阪神高速西線を経て名神高速へ。夜の走行。夜走ることが分かっている場合は、後ろの車からよく見えるように荷物に反射テープを付ける。


出発して約2時間後、21時過ぎのこと。
名神高速 尼崎ICを過ぎてしばらく走った後、その異変は突然起こった。

正確にいうと、直前に少しだけ前兆はあった。
バイクが、かすかに「カシュッ」「カシュッ」という音を発した気がした。
その直後、突然バイクの下のほうから「ガシャッ!」という音とともに、車体がグリグリっとブレる感じで直進性を失ってしまったのだ。

「なんだなんだ!?こりゃヤバいぞ」。すぐさま路肩に寄りながら左ウインカー、速度を落として停車する。名神高速の大阪あたりは路肩が狭くてすぐに壁、走行車線は車がビュンビュン走るのでヒヤヒヤだ。

スピードが出ないセローとはいえ、高速道路なので90km/hくらいは出ている状態でのトラブル。吹っ飛んでいたら死んでたかも。

まずパンクを疑ったけどタイヤに問題は無し。チェーンも問題ないようだ。
路肩ギリギリに停車したまま、タンクバッグからマグライトを出し、タイヤ、チェーン、シフトペダルなどをチェック。しかし外見上からは特に異常が分からない。
しかし、後輪を浮かして回すと引っかかるような抵抗がある。
またがってゆっくり進めてみると、やっぱり変な摩擦音とブレ。

こりゃー、素人が簡単に直せるトラブルじゃないなー、という結論に達するまで時間はかからなかった。トホホ、まいったなぁ・・・。


ここでパニクっても仕方ない。落ち着いて考えよう。
もちろん、こんな時間にバイクショップは開いてるはずもない。
JAFもバイクは対象外。バイク向け「JBR」という24時間体制のレスキューシステムはあるが、これは基本的にクルマで自宅または指定の場所までバイクを運送するだけというサービスなのであまり使い物にならない。

このまま高速道路を走行するのは無理。まずどうにかして高速を下りることだ。

不幸中の幸いか、尼崎IC〜豊中IC間は4.8kmしかない。高速道路のインター間の距離としては短いほうだろう。ついさっき尼崎ICを過ぎたと言っても1〜2kmは走ったと思うので、次の豊中ICまでは近いはず。

ガショガショと音はするけど、路肩をそろそろと走って先へ進む。暗い高速道路、しかも20km/hくらい速度での路肩走行なので、実際の距離以上に限りなく長く感じたけど、ほどなく豊中ICの出口が見えてホッとする。




さてどうするのか?


料金所の手前、広くなったところにバイクを停めて、取り急ぎ後から出発するはずの4人全員に「緊急事態」のメールを送信した。

その後、何とかインターを出て最初のローソンの駐車場に入った。
暗い高速道路から、人の生活を感じる明るい場所に来て少し安心感。ローソンの駐車場の端っこに腰掛けて、あらためて一息入れて、ちょっと弱ってる頭をフル回転させてみる。
取り急ぎ、今夜行くはずだった京都へもメール。

そこから、怒濤のメール返信と電話がやってきた(^^;;。
「大丈夫か」「原因は」「ケガは」・・。
その間に、事情を知らない外野の人たちからちょこちょこと、「もう出発しましたかぁ〜?」「みんなによろしくぅ〜」「丸太乗り大会は中止になりましたぁ〜」というようなのんきなメールも混ざってる(笑)。(語尾は筆者の主観が若干入ってます)

短時間の間にこれだけメールや電話のやりとりをしたのは初めてかも(笑)。
返信を入力してる間に次の受信とか電話が来る。あたふた。
大丈夫だって。体は元気。単なる故障だってば。ゆっくり考えさせてくれ〜。

ソロならどうにでも、という心境だったけど、今回は仲間がいるので、そのへんの要素も含めて冷静に最善策の案をいくつか整理してみた。

(1)東北行きを諦める。大阪で修理して適当にソロツーリングして帰る。
(2)バイクを諦める。後から来るクルマのどちらかに拾ってもらって東北へ行く。
(3)バイクを直して東北へ追いかける。
 3−1) 2日待って、次のフェリーに乗る。
 3−2) 直り次第、フェリーは使わず東北まで走る。



それにしても、見知らぬ土地で、夜遅くにバイクの故障で立ち往生、しかも翌日午前のフェリーに乗れなければ全ての計画がオジャン、という状況はどう考えても凹むよなー。「絶望」という列車に飛び乗って海を見に行きたい衝動に駆られたが思いとどまった。
不思議なことに、この時はほんの少しだけこの状況を苦笑いしながら楽しむ余裕がなかったわけではない。現場では1人だけど1人じゃない、っていうのもあるのかな?
とにかく、一人旅ではどんな人も普段以上にタフになる。「なんとかなる」ではなく「なんとかする」という心意気だ。
もっと最悪の状況など、いくらでも考えられるぞ。
例えば、事故で、ケガで、台風で、サイフ落として、携帯は電池切れてて、食あたりで下痢で、M7級の地震が起こって、親が危篤で、家が火事で、会社が倒産して、・・・うぎゃー!
あ、でも台風は本当に来てるんだった(;´_`;)。。。


いろいろ考えたけど、やっぱりセローを残していくわけにはいかない。
後から来るメンバーに車で拾ってもらって東北へ行くという案は消した。
よって、どう考えても翌日の朝に敦賀港にいることはあり得ない、という結論に達した。フェリーに乗るのは諦めた。
みんなには「吉住はいなかったと思って4人で予定通り行ってくれ」と伝える。

「残念。来年やな。」by Azb
これは冷たいメール。



ビバーク

翌日修理することにし、大阪で1泊を決意した時点で、やはり頭には24H健康ランドが浮かぶ(笑)。
携帯電話のブックマークには全国健康ランドのサイトが登録されているので、検索は簡単だ。(みんなも登録しておこう)
おおっ!豊中市にあるじゃないか。ここでも不幸中の幸い。まだ悪運はあるようだ。
「豊中リゾートプラザ」。
すぐさまローソンに入って豊中市地図を購入して場所を確認する。
コンビニには、たいてい入ってすぐの場所に地元の市街地の地図が置いてあり、誰が買うのだろう?と疑問には思っていたけど、「夜にバイクが故障して困っている県外のライダーが買う」という答えが分かって良かった。

この場所から3〜4kmくらいはありそうだったけど、何とか行けるだろうか。
押すとしんどいので、異音を発しながらも(ちょっと恥ずかしい)ゆっくりゆっくりと路肩を走って健康ランドへ向かった。「バイクを傷めてるんだろなー」と思ってドキドキしたけど仕方ない。実際の距離以上に遠く遠く感じた。そして無事到着。


走行中は連絡不通だったけど、ちーぼーからは頼んでいた大阪府内のYSPショップのリストが送られてきてた。それと同時に、ちーぼーの友達という人(バイク乗り)に話をつけてるから電話してみて、というメールが入ってた。
ここまで言ってくれるんだし、ということで見ず知らずのオダギリさんという方に、恐縮しながらもいきなり電話してみる。
初めてだけど気さくな人で、親身になって話してくれる。
おそらく工具や知識があったとしても簡単に直りそうな状態ではないようです、という現状を伝えて、今夜はとりあえず健康ランドで夜を明かす意図を話した。
しかしそのオダギリさんは豊中出身らしく、後からこの近所のバイク屋さんや営業時間など詳細情報をメールしてくれた。
人のありがたみが身にしみる。感激。


雨がポツポツ来たので( ̄□ ̄;)!、屋根の下の壁際にバイクを入れた。
あぁ、健康ランドに着いてからで良かったよ。故障で止まっている路上で雨が降ったら泣くところだった(笑)。

豊中リゾートプラザは、風呂は平均的でまあまあ良い感じ。平日特別料金1000円+深夜料金1050円ということでかなりお得。着いた時間が0時頃ということで明るさは感じられなかったけど、仮眠室はまわりのオッサンのイビキさえ気にしなければ寝心地は悪くない。ロッカールームでゴキを1匹見かけたのは減点。全体的にはまずまずか。
結局夕方に買ったドーナツのみが食料。我ながら不憫よのう・・。

明日の修理に備えてぐっすり眠ることにする。

本日の走行距離:144.5km


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