中国史関係映画
 

 ここでは中国史関係の映画の紹介...っつうか感想を書かせて頂きます。でも正直言って中国史映画ってそんなに感動的なヤツに出会ったことないんですよね〜(^^;;)
 というか映画で感動するには歳を取りすぎた?中国史関連映画では体質的に感銘を受けない?まあ,しかしそれでも中国史関連の映画をぼっちらぼっちら見るようになりましたので,ここでは御紹介がてら感想を書いておきます。

 ちなみに映画ほどネタばれされて興ざめ,っていうか実際に見たときに感動を減ずるメディアはないでしょう(知らんけど^^)。
 まあそんなわけで,なるべくネタばれになるようなことは書かないつもりですが,その映画を結構見る気のある方は念のため感想の頁は読まない方が無難です。ネタばれされたからと言って恨まれても私は知りません(^^)。

 ちなみに中国史映画紹介に関しては私のより遥かに徹夜城の方がお先で,かつ網羅しており,また粗筋を端的に紹介していると思います。映画に興味のある方は是非そちらも(^^)!
 ということで私は最初,中国史映画関係は作るつもりは無かったんですが(今後もバシバシ見ようとは思わんし)..........が,が、が....いやあ,面白いものというものは稚拙だと分かっていながら自分の言葉で語らせたくなるものですなあ,あはは(^^)。胡金銓作品に乾杯!



忠烈図
胡金銓(キン・フー)香港
●概略●
 時は明朝後期。浙江省の海岸を荒らし回る倭寇に困り果てた時の皇帝,嘉靖帝は朱ガンを呼び倭寇退治を任ずる。朱ガンは有能な兪を呼び寄せ,倭寇退治に乗り出した。日本人と中国人からなる倭寇と兪らの壮絶な戦いが繰り広げられる。

●感想●
 胡金銓(キン・フー)作品は私が訪問者リストの澤本様に散々薦められて見た映画である。いや〜、本当に素晴らしい。ただし胡金銓作品は「歴史映画」ではなく,「時代劇映画」というのが相応しい。中国「時代劇映画」。
 黒澤明「七人の侍」では歴史上の武士と農民の関係を知れるわけではあるまいが,あの映画はやはり日本の過去を描く映画として秀逸だと思う。というより,とっても面白くて,しかも日本史的である。忠臣蔵の話は決して史実通りとは言えないが,その時代を色濃く反映し,またマンネリながらもそれなりに楽しめる。水戸黄門はあんなことがあるわきゃない。しかし痛快だし,日本史の一時代に仮託していることは間違いない。
 まだ一部しか見ていないが,胡金銓映画とはそんな感じの映画である。中国にもこんな映画があったとは!中国史としてではなく,何よりエンターテイメント映画,そして私の場合にはそれが中国史を土台としていることで,もう文句無しなのだ。
 本作品は私が見た胡金銓作品の中で一番中国史ぽかった映画として筆頭に挙げる。


龍門客棧
胡金銓(キン・フー)香港
●概略●
 時は景泰八年。東廠と呼ばれる宦官主導の秘密警察が蔓延る世。忠臣が反対派から讒言により殺された。その子らも龍門に流刑に会うが,東廠は彼らも亡き者にしようとする。
 所は変わって龍門の,とある旅館。ここに謎の集団が訪れ,とある計画を練っていた。ここへふらりと現れる風来坊。彼らの間で丁々発止の戦いが始まるが,さて彼らの目的,そして彼らと忠臣との関係は何如?

●感想●
 一番最初に見た胡金銓(キン・フー)作品。といっても他のと同時であるが。この作品が無かったら他のも続けて見ていなかったかもしれないと思うと,十分に面白かったということである。
 ちなみに上での「忠臣」とは知る人ぞ知る于謙のこと。しかしそのことはストーリに全く関係なく,見ているときには気がつかなかった(だって中国名がカタカナで書かれているんだもん^^;;)。取りあえず,帰宅後にパンフを見て感動。しかし明の時代の雰囲気を知っていれば楽しめること間違いない。


女侠(上・下)
胡金銓(キン・フー)香港
●概略●
 時は明朝後期。陝西省の田舎外れに住む顧は取りあえず絵描きを生業とし,母と二人暮らし。母親は息子の科挙合格を望むが,本人は既に諦めかけていた。そこへ隣の砦に怪しい美しい女性が住み着く。幽霊屋敷とも言われるその廃屋に住みだした彼女の正体は果たして?

●感想●
 最初は「むむむ,中国伝奇関係か」と思いきや....
 し,しかし,な、長い(^^;;)。上の映画とぶっ続けで計8時間近く見た私は流石に辛かった。まあまあそれでも面白かったように思う。無念!東林党!


宋家の三姉妹
メイベル・チャン香港
●概略●
 無邪気に遊ぶ三姉妹。それは清の末期であり,その時代こそが彼女らの運命を決定することになる。
 所は変わって1981年。三姉妹のうち,次女は今まさに中華人民共和國で息を引き取ろうとしていた。一方,三女はニューヨークにいる。肉親の死に際ながら,三女は次女に会いに行くことは出来なかった。飛行機が飛び交う時代,物理的には難しくなかった。しかし決して訪れることは出来なかった....それは彼女らがまさしく近代中国の悲しい分裂を象徴する立場だったからである。
 彼女らはある意味では華やかな歴史の大舞台に立つ,名誉なる桀女であったが,また同時に悲劇のヒロインでもあった。そして中国人民の悲劇の代表でもあった。
 中国に起こった悲劇の分裂を,清楚なシーンによって描く。

●感想●
 岩波ホールでやっていた。有名な宋家三姉妹を描く。印象としては「綺麗な歴史映画」という感じ。三人とその夫達の運命を知っていればこの映画からはそれ以上,知識を得られることはないであろう。
 しかし全体的に美しいつくりで見て後悔はなかった三姉妹をよく知らない人には一見の価値が十分にあろう。


阿片戦争
●概略●
 時は清末期。イギリスは茶の大量輸入等による貿易赤字対策として,阿片を中国に売りつける策に出ていた。大量の銀を所有していた大清帝国も,その策にはまり阿片に蝕まれ,もはや道徳秩序の維持のためにも,経済対策としても猶予のならない状況に達していた。
 林則徐は時の皇帝,道光帝より直々の勅命を受け,阿片対策に乗り出す。今まではナアナア政治ででほとんど対策を講じなかった大臣に代わって,阿片没収を強行すべく、軍隊を動員,イギリス商人達に阿片供出を命令した。情勢は一気に緊迫の様相を見せる。
 当時は民主制が最も発達していたイギリスではその清朝の強硬策に対して,国家の威信を懸けて軍隊を派遣すべきか,その理を悟り大人しく引き下がるか,大議論が行われる。イギリス議会決定の行方は,そしてその結果は...そして林則徐は...

●感想●
 中国史映画って難しいなあ,と思わせた作品。決して面白くないというか,悪い映画というか,見たら後悔するという映画ではない。多分。



始皇帝暗殺
陳凱歌四カ国合同
●概略●
 時は春秋戦国時代末。長かった戦乱の世も,西方の野蛮(出身)国である秦によって統一されようとしていた。そんな中,秦の始皇帝の寵姫であった趙姫は,幼なじみで秦の人質となっていた燕の太子と共に,秦から燕への逃亡を果たす。
 場所は変わって,暗殺を生業としていた荊軻は殺しに入った家で自ら死を求める少女にショックを受け,もはや剣を捨てようとしていた。そこへ訪れる燕の太子による暗殺の依頼。暗殺を共に頼む趙姫は荊軻の怪我を看病する。果たして荊軻の心は動くのか?本当に荊軻の心を動かすものとは?
 そして暗殺の行方はいかに....

●感想●
 はっきり言って中国史の戦争を描かせた作品としては,そのスケールに感動させられる。金をかけただけあってその壮大さには裏切られない。私が見た中で一番迫力があった中国史映画。しかしストーリとしては私はいまいちというか,いまさん位である。
 同じ原作を元にした皇なつき女史の漫画作品を先に読んでしまったからかもしれん。しかしそれよりも陳舜臣著「中国任侠伝」における任侠としての荊軻のイメージが頑として私は譲れないからであろう。本映画を見て荊軻が『史記』では「遊侠列伝」ではなく「刺客列伝」に入れられていることを痛感したのであった...
 ちなみに私が人物に強い印象を受けたのは,ひたすら美しい趙姫でもなく,悲哀の漂う荊軻でもなく,人間くさいエイ政(始皇帝)であった。


ムーラン
ディズニー
●概略●
 アニメーション。時は唐時代。木蘭は明るい活発なファ家の一人娘であったが,封建的な世の中でそれは決して喜ばしいことではなく,なかなか結婚の機会に恵まれない。
 そんなファ家に突き付けられる異民族防衛の為の召集令状。父は以前の活躍で足に怪我をしているが,ファ家は男子がおらず,この度も父が行くしかない。木蘭はそれに心を痛めて,無茶を覚悟しながらも剣を取り,男子の形(なり)をして召集場へ向かった。果たして木蘭は,か弱き乙女ながらも軍隊で過ごせるのか。そして迫り来る凶悪な異民族に対して唐軍は立ち向かえるのか...

●感想●
 ディズニー初の中国史をネタにする映画。マイノリティとして中国系が決して少なくない米国で,米国の象徴足るディズニー映画で,これが初の中国史ネタ映画であるというところに米国社会の複雑さを見るような気がする。
 ともかくも結構期待していて,同時に期待しないようにしていたのだが,まあそれなりに楽しめた作品。勧善懲悪で、しかも異民族が悪という単純構造はいかにもディズニー映画であるが,元気で明るく,前向きな女性を描く素晴らしさは,散々にマンネリ・陳腐化してもはや終わりかと思われた後,80年代後半に見事復活を果たしたディズニーの,典型的路線を受け継いでいるように思う。エンターテイメント映画としては結構面白い。
 何よりも中国史ネタが,丁寧な作りのディズニーによって,中国的絵画雰囲気を取り込みながら描かれたことは感動である。


ラストエンペラー
●概略●
 清末の世。外国の侵略に苦しむ中で,中国内で政権を握っていた西太后が死に,幼帝・溥儀が即位した。しかし時代はもはや完全に皇帝専制に対する信望を失い,革命は確実であった。
 名実共に1999年現在における「中国のラストエンペラー」となった溥儀の運命やいかに。そして老いた溥儀の見た中国の革命後の世界とは....

●感想●
 多分最初に見た気がする中国史映画。ほとんど覚えていないが,柴禁城の美しさ,溥儀に平伏す百官への壮大なる眺めが印象に残る。また溥儀の数奇な運命は,知識の無かった私に中国近現代の複雑さを痛感させ,衝撃さえ与えるの十分であった。
 私はこの映画のような衝撃と感動を求めて,新たな中国史映画を見るのかもしれぬ。もう一度見たい,でも無理しては見る気がしない,そんな思い出の中の映画である。


孫文(孫中山)
松竹?日本?
●概略●
 清朝末。ハワイで教育を受けた孫文は革命家として中国広東沿岸で何度も蜂起,また世界への革命支援を請うための遊説に乗り出す。
 日本各地で見つかり,志を同じくする同士達。彼の革命は成功するのか。そして彼の挫折とは....

●感想●
 ビデオでお気楽に,期待せずにみた映画。期待しなかった割にはまあまあ,レンタルビデオ代の価値くらいは十分にあったと思う。孫文の協力者,宮崎滔天が印象に残る。

 

白蛇伝
東映動画日本
●概略●
 アニメーション。白蛇の化けた乙女と恋する青年。しかし謎の法師は彼女の正体を見抜く。正体を暴こうとする法師と,それを防ごうとする乙女の間で戦いの妖術合戦が開始された。
 中国では有名な伝説に基づく日本初の長編カラーアニメーション映画作品。

●感想●
 物事には何事も初めというのがある。アニメーションが大量生産されている世の中であるが,アニメーションというのは多大なる労力を必要とするもので,昔外国では「長編アニメーション映画で失敗すると数十年は立ち直れない」という時代があった。そんな中で「東洋のディズニー」を目指し,大同団結により発足した東映動画が、満を持して送り出した日本初の「長編カラーアニメーション映画」。それが中国の伝説に基づいた作品であるというのは不思議なものである。
 ストーリーとしては決して現代の我々にとって面白いものとはいえないが,その技術の完成度は今のアニメと比べてもそんなに見劣りしない。そしてこの作品などでアニメーションの道を進んだ宮崎駿は現在世界レベルのアニメーション監督になっている。


風のように雲のように
●概略●
 アニメーション。長く続いた中国王朝,素乾国も次第に崩壊の兆しが傾いていた。そんな折り,新皇帝が即位し,そのお后候補が召集された。まだ,あどけなさの残る田舎娘・銀河はお后候補として後宮に向かう。
 そこでは優秀な妃候補を見つけるべく,なんと大学のような,そしてユニークな鍛錬というか,教学というか,そんなのがなされるのであった。そこで知り合うやはりユニークな同輩(?)達。銀河とその同輩達,そして素乾国の運命やいかに。

●感想●
 高校時代にテレビで何気なく見た作品。中国的なアニメーションというのは物珍しく注目してしまったが,当時私はそれほど極端に中国史ものに興味を示していたわけではない。しかしその雰囲気,銀河などヒロイン達の魅力は少年の心を十分に擽(くすぐ)るものがあった
 原作である酒見賢一「後宮小説」は本アニメーションに増して,優れた作品である。中国史としては「まがい物」に間違いないが,限りなくそれに近い「まがい物」はやはり素晴らしく,本物にくらべて面白さが劣るとも限らない

 

三國志(前編)
●概略●
 時は後漢末。黄巾族と呼ばれる反乱軍が謳歌する中,漢朝復興を目指し,劉青年は立ち上がった。「生まれる日は違えども死ぬ日は同じ」として義兄弟の仲を誓う三人。彼らの運命,そして中国は再び平和を取り戻すことが出来るのであろうか。

●感想●
 1980年末に高校生だった私が見に行った作品。確か赤壁くらいまで描いていたか?不評だったためか,後編が上映された記憶がない。
 舞台は中国大陸だし,雰囲気も中国史はしていたが,それでもスケールの小ささに思わずがっくり来てしまった作品。私の中国史映画への不信はここから始まるのであった....(^^;;;)



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