連載・巨人をめぐるコラム(2)

悪夢が見えるとき

佐分利 実(東京パワー開発営業支配人)
Words by MINORU, Saburi


こんちは。営業支配人佐分利実です。また出しゃばってます。
こんどは、ここでコラムなんか書いてます。まったく何をしてるのやら。早く 2作目を完成させたいのにね。

さて、このコーナーのコラムはハードな「巨人」をめぐる考察からこのよう ないいかげんな記事までを連載してお届けする予定です。果たして誰が読んでる のかわからないけど、まあ気が向いたら全文読んでみるとおもしろいかも。でも ときどきけっこうフェイク度の高い記事だったりすることがあるのでこころして 読んで下さいね。

 今回は、悪夢のお話です。悪夢はやだよね。うなされる。冷や汗が出る。で 、起きてみると何であんなのが怖かったんだっていうこともしばしば。ときに反 復する悪夢なんかもあったりして、人それぞれに固有の恐怖のイメージもあるん だろう。
 ところで、なぜかウチの「葵五郎ジャイアント」をみてから、夢に巨人が出 てきたという人が2人も現れた。もちろん、僕の身の回りだけの話なので他にも そういう方はいるのかもしれないけど。(いないかもしれないけど)

 で、どういう夢かというとやはり2人とも悪夢だったらしいのだ。 それは とても納得できる。そりゃそうだよね、いきなり巨人が出てくるシチュエーショ ンは悪夢だと思う。

 前回のこのコラムの 海月氏の記事 にもあるように、巨人とは眩暈、つまりめまいの感覚を伴う幻視だという解釈 から行けば、巨人が夢に出てたら悪夢になるしかないだろうね。開け放った窓か ら、いきなりでかいヤツがのぞき込んでたらどう思う?たぶん僕は固まるね。ま ず、何が起きてるのかわからなくなると思う。巨大な目がこっちを見てたら、そ れが目だって気付くまでにも時間がかかるんじゃないだろうか。
 よく知ってるものなのに、あまりに巨大だったりしたら理解することができ なくなる。現代芸術で耳を作り続けてた作家がいたよね。(なまえ忘れた、知っ てる人いる?)巨大なブロンズの耳。あれにしてもあまりにでかいと近くから見 ると耳だってわからない。何かただの異様なものという感覚しかない。ちょっと 違うけれど、「ブルー・ベルベット」の耳の落ちてるシーンだって過剰なマクロ 撮影で気持ち悪いったらない。あれだって大きな耳がスクリーンいっぱいに出て くれば怖いってことの見本だろう。過剰なUPも怖い。書いてるうちにどんどん 思い出してるんだけど、バロム1の怪人も怖かったね。クチビルとか耳とか脳味 噌とかの大きいのが頭にのっかってるヤツ。なんでも切り取って巨大化すれば怖 いってことか。

で、その夢を見たヤツの話なんだけど、ひとりは、家でくつろいでるといき なり巨大なヤツが窓から見えてびっくりするっていう夢らしい。それだけ。だけ ど、そのそれだけというのがけっこう怖かったらしい。高層マンションの部屋が ちょうど巨人の目のあたりの高さになってて、そこでばったり目があったりした ら怖いと思わない?

で、もうひとりの夢というのがもっと変な夢。どうやらその夢を見た本人が 巨大化する夢だったらしい。で、敵の悪い巨人を光線技かなんかで倒すんだって 。それだけなら、いい年こいてのヒーロー願望の夢だよっていってしまえるんだ けど、悪夢になるのはそのあと。意気揚々ともとの大きさに戻るのはいいんだけ ど、倒したはずのヤツももとの人間の大きさにもどっちゃっている。血を流して いる。ぴくりともしない。ということは・・・?!いやな気配にあたりを見回す とあわただしい人の動き。やってくるのは数人の警官たち。倒した怪人じゃない 、今はそのへんにいる普通のおやじの死体を検分し始めている。やがて、こちら に気付く。「ちょっと、話をうかがいたいんですが・・・」丁寧、でもそれに従 わせるような強い口調。どんどん人が集まってくる。ヤツを殺したのは?オレ? だってさっきは、人間じゃなかった。いや、でかいだけで人間じゃないなんてい っていいのか。冷や汗ぐっしょり。勝手に再現してるけど、だいたいこんな夢だ ったらしい。

どっちも悪夢に違いない。でも、起きてみるとあまりに荒唐無稽だ。それに 気付くとおかしくなって笑っちゃうかもしれない。だけど2人の見た夢は実は同 じ根っこから出てきてるんだと思う。それは、やはり巨大な人間というのが思考 を停止させているから。普段だって不意に誰かと目があったりすると困ってしま うではないか。それが巨大なヤツだったりしたら、ますます困る。目のそらしよ うがない。目をそらしたところで、相手の目が窓いっぱいになってこっちを見て るんじゃどうしようもない。逃げようがない。よく映画であるでしょ。殺人現場 を目撃する、こっちは隠れてる、でも殺し屋が不意にこっちに気付いたように鋭 い視線を投げかける・・・。そういう映画のワンシーンだってハッとするでしょ う?相手が殺し屋だったら何をするかわからない。そういう恐怖感がある。で、 相手が巨人だったら?もう何をするかわからないよね。巨人は現実にいないから 、次の行動の予測はできない。相手が見つめているあいだ、思考は完全に停止す る。ただ、恐怖だけがじわじわと広がっていくのである。
 相手を殺しちゃった方はもっと端的かもしれない。相手がでかいヤツだった ときになら、単にその大きさは敵としての象徴的な意味しか持ってないんだろう 、その夢の中では。でも、普通の人間の大きさに戻ってしまうと、その「普通の 大きさ」というのがとたんにいろいろな意味を持ち始める。基本的人権とか、社 会的地位とか、扶養家族とか。普通の大きさというものは実は、数々の定義を持 っているが故に普通なのだ。だから、怖くない。普通の人間だとわかっているか ら。しかし殺すと「殺人」になる。巨人の場合はまず人間かどうかということか ら判断しなければならないから、殺してしまったってそう罪悪感は感じないのだ ろう。判断するっていったって、思考停止状態なんだしね。巨大なヤツと戦って いるうちは、なにも思ってないんだけど、普通の大きさに戻った瞬間「巨人」だ ったものが「人間」になってしまい、別の恐怖に襲われるというのがこの夢の一 番のポイントだ。

 巨人を見るということは、こうした現実と非現実の境界線上の恐怖なのかも しれない。一歩間違えば、巨人はただの道化になってしまうだろう。(ごろーち ゃんもそう?)でも、ほんの少しだけ現実側に足がついてるからなんだか得体の 知れない恐怖があるのだ。そして、そんな恐怖を少しでも見るものに与えること ができたら・・・。それが「葵五郎ジャイアント」のねらいなのである。(ウソ )

 まあ、ごたくはともかく、いよいよ第2話「盗まれた変身ソフト」近日完成 予定。さらに目がくらむようなインチキな特撮世界を展開するつもりだ。そして いつか悪夢に出てくるような怖いヤツを登場させてみたいと思ってる。みんな、 待っててくれたまえ。

(こんな大見栄切っていいのかしら・・・)



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