迷惑メール(spam)ニュース年度末決算 |
2002/11/03 改訂初版 |
2001年スパム関連ニュース |
antispam-j メーリングリストにおいてかわはら様の「スパム十大ニュースを決めようか」という提案で高崎が出した候補。面白そうだったのに投票・集計し損ねた。なお12月分は付けたした。
赤字は携帯スパム関係。青字はスパム反対MLが関係するもの。茶色は国外動向。
・1月 欧州委員会 世界のスパムの現状被害を一兆円と試算
・1月 ねずみ講を行ったspammer逮捕、その後も続出、5月に有罪判決。
・3月 前年にspam発信(謝罪済)した議員D氏、C県知事に当選
・4月 プロバイダ某、自らスパム行為を繰り返す(後に改心)
・5月 OCN、悪質spammerの蹂躙を受け苦情殺到、スパム処分の為に約款見直
・個人情報保護法案、スパム抑制には無力?しかも制定へ迷走中。
・5月 官房長官、携帯spam受信に激怒。それを機に携帯spamが社会問題化
・携帯spamの広がりで「迷惑メール」の言葉がspamの代用としてほぼ定着
・5月 spam反対運動MLにおけるspam反対運動組織化、エネルギ不足で見送
・6月 DION、マルチ商法関係スパムの宣伝サイト抹消措置相次ぐ
・OCNに取り憑いていたspammerグループ、ライブドアへ移動?
・6月 ローカル新聞社某、己のspam行為を棚に上げ、spam反対サイトに削除要求
・6月 「これはスパムではない」spam配布、スパム問題啓発不十分暴露
・米国 連邦レベルのスパム禁止法成立は幸先見えず
・画像大量送付型詐欺目的spam暗躍、各地のプロバで犯行を繰り返す
・7月 日本のアンチスパム拠点である「スパム反対運動掲示板」改竄される
・8月 携帯spam用ソフトDMMaker、一時は販売中止を宣言するも結局販売継続
・9月 携帯spamに激怒の2ちゃんねら達、spam宣伝サイトにDoS攻撃
・外国のスパム幇助サーバ糾弾組織ORBSシステム 転変
・GMO(interQ)、アンチスパム方針を明示するも、関係スパム相次ぐ
・10月 迷惑メール送信者逮捕!エラーメール発生による偽計業務妨害容疑
・10月 DoCoMoの申請認められ、迷惑メール送信業者へ仮処分命令
・10月 悪質アダルトspammerソニーテシオ氏集団発覚、spam反対論者と暗闘
・11月 スパム防止の為の法整備が総務省、東京都、民主党、経済産業省などで検討開始
・11月 OLS提供のVector、spam反対者の申請でspam幇助ソフトを追放
・パソコンスパム被害拡大、Yahoo!Jなども迷惑メール排除機能を付加
・11月 民主党が迷惑メール防止法案を提出。spam反対論者の意見を無視しオプトアウト案採用。
・12月 EUの通信大臣がスパム禁止で合意。具体的な規制案では一致を見ず。
・12月 思想系spammer、ニフティメルアド大量販売中高年spammerなどが理解を越えるspam行動を継続
評論(高崎):
2001年度は日本においてスパムに関する大きな転換点の年であったことは恐らく多くの人に認められる所であろう。
まず「スパム」という言葉が一般化していなかった(あるいは今もしていない)世の中で、携帯電子メールの実質スパム(通称「迷惑メール」)の被害が大きく拡大化し、「迷惑メール」の語はすっかり「スパム」の代名詞として定着してしまった。携帯電話の「迷惑メール」問題は最初「出会い系サイト問題」とも密着していたが、アダルト関係の「迷惑メール」も増加していったことで、「迷惑広告メール」の意味合いが強くなり、一層「スパム」と同義語になった。
同時にそのあまりの被害のひどさが、マスコミや行政、立法などを動かし始めた。パソコンのスパムもここ数年被害をじりじりと拡大させていたのだが、携帯スパムの極めて大きな被害は大きな契機であり、パソコンスパムだけだったならばこれほどの変化は無かったであろう。
世間では「迷惑メール」問題を携帯電話に特有のものであるかのように考える人もいるであろうが、識者達は「携帯迷惑メール問題」は「電子メールスパム問題」の一部であることをよく認識している。
具体的な法律整備にまでは至らなかったものの、1999年にniftyがスパマーへの仮処分命令を勝ち取ったように、2001年にはNTTドコモが同様のものを得た。しかし前者が極めて限られた被害だったのに対し、後者の被害の大きさははかりしれず、その割には2001年の中で勝ち取ったものは少ないと言えよう。しかしおそらくその成果は2002年以降に受け継がれると思われる。
そのような大きな変化を反映して、スパム反対運動でも大きな変化が現れた。それまでスパム反対運動をする者は大部分、パソコンスパムがメインであって、携帯スパムを対象とした人は皆無であったといって良い。むしろ、送信側のプロバイダーへ連絡を取ることが可能なパソコンスパムに対して、携帯スパムはヘッダがないという致命的な仕様の不備から、スパム反対運動家達は携帯電話のスパムを見放していたと言って良い。
しかし携帯スパム(迷惑メール)の広がりで、「迷惑メール問題といえば携帯電話のもの」という思いで反対運動に加わるものが続出した。この傾向は両者の反対運動家達の間で、いささかの認識違いを生み出す原因にもなっている。しかも携帯スパムはキャリアのサービス内容によりその被害や対策が統一的でないことから、啓発活動や反対運動などでまとまりがつかない現象も生み出している。
携帯電話の迷惑メールの動向はどうなるか予断を許さない状況である。そもそも携帯スパムの原因の一つには、単純な電話番号@云々のメールアドレスにあったのは確かなのであるが、これを無くすように措置を取った結果、スパマー側によって英数字でも送るようなシステムが開発されてしまった。これは多くのスパム反対運動家達の想像以上だったのではあるまいか?
一方でパソコンスパムの被害も確実に増加しているのが感じられる。
なお、スパム拡大の原因には2000年度後半からのインターネット接続電話料金定額制が大きな役割を果たしていると考えられるが、更に2001年度にはインターネット接続に関しても価格破壊が起こり、多くの人にとってインターネットがより身近なものになりつつある。だがこれは同時に、スパム被害を増加させる土壌も生み出していると考えられる。
日本のスパム状況の大きな変化の一方で、数年前からスパムへの取り組みが見られる海外においては逆に大きな進展を聞けなかった。やはりスパム問題は表現の自由などの問題に絡んで、一筋縄ではいかないことを感じさせる。果たして日本でもそうなのか、あるいは日本の方がスパム規制に関して進んでしまうのか。
いずれにせよ、2002年はその方向を決める大事な年になるであろう。