2001/07/ ホームページで新しい強化活動を〜情報の活用と表現〜

この原稿は、新潟教区報「遠慶」(おんきょう)第85号に掲載していただいたものです。



【法衣を着てコンピュータに向かう姿に憧れて】

私が、法務にコンピュータを利用するようになったのは、今から十四年前、昭和六十三年頃のことでした。きっかけは、○○教区の筑後誠隆師が書かれた「電脳坊主のパソコン放談」という本でした。この本の表紙には、師が法衣を着てコンピュータに向かっている姿が写真で掲載されており、書店でこれを見たとき、法衣とコンピュータという、当時としてはかなり新鮮なその光景に少なからず衝撃を受けました。

自分も、法衣姿で、法務の中でコンピュータを使ってみたい。そして当時盛んになりつつあった「パソコン通信」を通して情報交換してみたい。そんな気持ちが、コンピュータを法務に利用しようと私が思い立ったきっかけでした。

【御門徒の情報のデータベース化】
寺の東院と工業高校の教員という二足の草鞋を履いていましたので、昔のMS-DOS時代から、学校現場で、生徒の進路指導業務や成績処理等にコンピュータを活用していました。しかし、当時はまだ、御門徒の情報をデータベース化するということについては、アレルギーを持たれる方が多かったように記憶しています。「コンピュータで今年の年忌にあたる御門徒をプリントアウトするなんて失礼じゃないか」とよく言われました。しかし、寺の事務における効率的な、かつ確実な作業のためには、コンピュータの利用は今後必須になると感じていましたので、少しずつ時間を差し繰り、コンピュータを利用した寺の経理や、御門徒に関する情報のベース化を私なりに進めてきました。

御門徒の情報のデータベース化には何年も必要とします。その作業の年月の中で、自分自身の頭の中にはすでにデータベースができてしまいます。コンピュータでのデータベース化は、あるいは必要ではないのではないかという思いも起きます。しかしここでデータベース化に対する意欲を失ってしまえば、寺を次の代に継いだときに、また次の代で苦労しなければなりません。

今、二十一世紀の情報化社会という大きな変動の中で、私がしておかなければならない大切な仕事と決意し、日々ディジタルカメラを片手に、コンピュータに向かっている次第です。

【ホームページの開設】

当山のホームページを開設してみようと思い立ったのは、今から六年前の平成七年頃でした。当時はまだインターネットという言葉もようやく普及し始めた頃で、「情報交換、情報入手の手段として電話やファクスと並んでインターネットが必需品」というような時代がほんの数年後に来ようとは、あまり考えられていませんでした。前にも書きましたが、工業高校の教員もしていましたので、これからの工業高校生の教材に役立てばという思いもあって、ホームページの作成に着手しました。

◇ホームページ開設までの手順

ホームページを開設するためには、

@テーマを決め、公開する内容を決定する
Aその内容を取材・準備する
B全体の構成を考える
Cホームページの作成ツールを選定し、使用方法を習得する
D全体の構成にもとづいて、実際に作成する
Eプロバイダーに転送して公開する
F検索サイト等に登録してホームページを公開していることを宣伝する、という手順(これらの中には並行して行うことのできるものもあります)

が必要になります。
私も、この手順で公開までこぎつけましたが、思い立ってから公開までおよそ一年間必要でした。これらの手順の中で、結果的にもっとも時間を要したのはAとBでした。実は、最初は「早く作りたい」との思いから、AとBを軽視して簡単に通過し、Dの作成にすぐとりかかってしまいました。しかし、そのDの作業の中で、「ああすればよかった、こうすればもっといいものになる」「あれも盛り込みたい、これも紹介したい」という要求が次々と自分の中で生じ、結局AとBに戻ってはまたDにという繰り返しが続きました。そしてその度ごとにそれらの内容を掲載しているページ相互のリンクの関係を再構築するという作業が伴い、多くの時間を浪費していたような気がします。やはり、しっかりとした準備と取材、全体の構成の検討に時間をかけることが大切だと感じました。

◇ホームページの作成に必要な『デザインのセンス』

ホームページを作成する中で、私がぶつかった一つの壁があります。それはページを構成するために必要なデザインのセンスです。

ホームページには、「きれいだな」「センスのいいページだな」と感じるページもあれば、「ちょっとセンスが悪いな」「派手すぎるな」などと感じるページもあります。ページの背景、文字の配色や大きさ、そして文字や画像の配置等々、そのすべてが作成者のデザインのセンスにかかっています。私自身、それほどセンスが悪いとは思っていなかったのですが、いざホームページを作成するにあたって、いかに自分のデザインセンスが貧困であるかということを痛感させられました。

日頃から多くのホームページを見て、センスを磨き、自分のホームページのデザイン構成についてイメージを膨らませるということの大切さを感じました。

◇更新作業

さてようやく完成し、検索サイトに登録すると、最初はそれなりに多くの方に見に来てもらえました。しかし、その後がつづきませんでした。一度見ればそれで終わり。二度、三度と見るほどでない、というわけです。内容が浅い、情報量が少ないホームページや、頻繁に更新していないページは敬遠されます。継続的な内容の検討、管理と更新が必要のようです。たとえば、寺の行事があったときには、いつも写真入りで紹介する、法座が立ったときには御法話を録音しておいてテープ起こしをし、すぐにホームページに掲載する等々です。

しかし、これはできそうでできない、非常に手間のかかる作業です。そういう私のホームページも、ほとんどそれが実行できていません。大いに反省するところです。

◇情報モラル
ここ数年、情報に関するモラルがよく話題になります。ホームページを公開することは、ちょっと大げさに言えば、世界に対して情報を発信することになります。したがって、「情報の保護」という点で、プライバシーや著作権などの保護には特に注意しなければなりません。自分のホームページで使用している文書や写真が著作権の侵害になっていないか。ホームページでの表現がプライバシーの侵害や、他の人々への誹謗、中傷になっていないかなどを常に確かめることが大切です。

◇応援のメールやアンケートへの回答が楽しみ

ホームページを開設してから、ホームページを見ていただいた方々から毎週数通のメールをいただくようになりました。それが、御門徒の方からの場合もありますが、まったく面識のない方からの励ましである場合も少なくありません。ホームページを通じて、少しでも御法義の和が広がっていることはありがたいことです。
ただ、そうしたメールの中には、今深刻な悩みと迷いを持っていると打ち明けてくれているものあり、僧侶として何ができるかということについて、身の引き締まる思いを感じることがあります。

一方、ホームページに設置してあるアンケートに回答してくれる方もたくさんおられます。これは、今後の運営に大変参考になっています。

【21世紀の若い世代への布教のために】
平成15年度から、高等学校で普通教科「情報」が始まります。「国語」「数学」「英語」等の教科に混じって、「情報」が2単位必修となります。この指導は、小・中・高を通して情報教育全体に一貫した目標(「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」を育てる)を持たせて展開されます。高等学校での指導につなげるため、小学校では、「総合的な学習の時間」や各教科において、また中学校ではそれに加えて「技術・家庭科」や「社会科」において、児童、生徒の情報化社会に生きる力を育てていきます。

こうした教育の中で指導されるコンピュータの利用方法を「情報の活用」と「情報の表現」の二つに整理して考えると、「情報の活用」にはワープロ、表計算、データベース、インターネットによる情報収集等があり、また「情報の表現」にはホームページの作成やコンピュータを利用したプレゼンテーション、そしてさらに情報モラル等があります。

このような教育を受けてきた若い方々が、これからの社会に増えていくわけですから、法務の中で、そして教化活動の中で、コンピュータを利用することは、かなり有効なことと考えられます。例えば、法務の中で、「情報の活用」としては、御門徒の情報のデータベース化、あるいはここでは書きませんでしたが寺の経理関係への利用があります。また「情報の表現」としては「ホームページ」による教化活動をはじめとして、法話の中でのプレゼンテーションなども考えられるのではないでしょうか。

【おわりに】

以前は、何かを知ろう、調べようとするとき、百科事典で調べました。今はそうしたときにはインターネットのホームページを検索して調べることが当たり前になっています。たしかにインターネットのホームページに掲載されている内容は、百科事典とは異なり、その真偽は必ずしも信頼のおけるものではありません。しかし、「古くならない百科事典」としてホームページは多くの最新の情報を与えてくれるものです。

若い世代の方々が、ふとしたきっかけで「浄土真宗」というキーワードでインターネットのホームページを検索したとき、たくさんのホームページが検索され、それを機会に「浄土真宗」をより深く知ることとなれば、これは「二十一世紀にふさわしいご縁」といえるのではないでしょうか。そしてもしその中に、自分の住んでいる地域にある寺院のホームページがあったなら、今まではちょっと行きにくかった寺も、「行って見ようかな」という気持ちを抱かせる
身近な存在になるのではないでしょうか。

そうした若い世代の方々が、「ホームページを見ました」と言ってお参りに来てくれるということが、当山では少しずつ増えています。そういう方々は、お参りを終えて帰られた後も、「お世話になりました」と電子メールを送ってくれる方が少なくありません。

新しい時代に向けて、新しい教化活動として、ホームページによる情報発信をこれからも行っていきたいと思っています。

当山のホームページURL
http://www2g.biglobe.ne.jp/~ota/
メールアドレス
otayouichi@mail.mynet.ne.jp


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