「猶予の月」
神林長平



「何か小説読みてえな」て場合、早川文庫のコーナー 行って神林長平か梶尾真治探すのが俺のパターン。十中八九。 ていうか、それしか作家と出版社知らないだろ、お前? ご明察!

と、言うわけでブ厚い上下巻のこの本を手に取り、 裏表紙のあらすじを一読。

理論士イシスは、詩人である弟アシリスに恋していた。
けれどもカミスでは姉弟の恋愛は禁止されている。
え?恋愛もの!?うそぉ。 日本SF界きっての屁理屈男、口車マシンガンの神林が? しかも、姉弟の?ど〜してだよ!? おい!おやじ!!笑かす気か、長平?

とりあえず上巻買って読んでみるごぼし。
笑った。ニヤリ。んも〜う、 どっから読んでも神林。その証拠にほら ポキン。神林。 なるほど ポキン。神林。

世界は”時間””現実事象””可能事象”で構成される。 ふんふん。で? ”事象”を選択することで世界が変わるって?
どうよ?この理屈具合は。所謂、神林節ってやつ? 今回は量子力学で遊んでみました。 「神林、宇宙を語る」な〜んつって。って、言ってみればそんな 感じ。

おまけに、二人目の主人公如月淳が執筆する書物中書物の タイトルが「猶予の月」。なんか、 この主人公って、実は神林自身のことじゃん?って読者に 勝手な錯覚をさせる手法なんて、つげ義春を思い出しちゃって ニヤリ。

”猶予”と書いて”いざよい”と読むこの作品、 神林テイスト爆発及び似非量子力学エキスプロージョンで、 俺的神林長編作品ランキング第二位の地位を与えちゃいましょう! 因みに、第一位は「あなたの魂に安らぎあれ」、第三位 (先刻まで二位)は「七胴落とし」。

それくらい、傑作です。


戻る