「グレートマジンガー」
原作・永井豪  作画・桜多吾作



あのなぁ。
読めよ。
絶っっ対ぇ面白いから。
漫画史に残るロボット漫画の大傑作。
「え?だって20年も前の子供向け漫画でしょ?」
「しかも、豪ちゃん描いてないじゃん。」
「それに誰よ?“さくら たごさく”って?」
「あ、あたし知ってる。昔、コロコロコミックで受験漫画 描いてた人じゃない。答案2枚返し〜、とか言って。 あと、芯が折れない鉛筆。四菱ハイユニ!」
「でもあれ、途中でボクシング漫画になっちゃうんだもんな。」
それは、のむらしんぼ「轟け!一番」。
正解は「釣りバカ大将」な。
あと、たごさく、じゃねえ。断じて、違う。

理屈じゃねえんだ、こりゃ。
ここから内容に触れること書くんで、読みたくない方は 出てってね。でも、 ストーリー知ったところでこの本の面白さは減らないから。

何と言っても、敵のミケーネの作戦がえげつない。
しかも、戦術レベルで作戦立ててるのよ。

普通、悪の軍団って「コンビナート大爆破作戦」とかさあ、 専ら戦略レベル(あるいは、ほとんどがそれ以下)の作戦しか 立てないじゃない。そんなことだから、じきに補給路断たれて、 紅茶好きの一見冴えない風貌の男に各個撃破喰らうんだよな。
だが、ミケーネは一味違うよ?なにしろ、第一話っから グレートの基地探索して攻撃 しようとする訳さ。まずはグレート倒そうって。世界征服は それからだっつって。情報収集の重要性も心得てる訳。
他にも、日本に前線基地造ろうとしたりね。

まあ、惜しむらくは部下の働きの腑甲斐ないことかな。
実際、愚痴こぼしてるし。地獄大元帥。
上司、中間管理職は苦労するわな。

さらには、企業の手によって設計図を盗まれ量産されるグレート マジンガー。
量産型モビルスーツ・ジムに先立つこと五年(ガンダムが '79、グレートが'74)。吾作の手によって、 ここに主役級ロボットが量産されていたという驚愕の事実!
びびれ〜。
それに群がる各国国防関係者。やがてグレート争奪の殺し合いに。 最終的に量産グレートを手中に納めるのがミケーネ!
金さえ貰えれば悪の軍団にも兵器を売りつける金の亡者。

物語後半は、日本から追われた剣鉄也ご一行様、 無人島で原始生活始めるは、物資補給のために街を襲うはで アウトロー状態。
どさくさに紛れて街で象牙の麻雀パイをかっぱらう兜博士曰く。

「これも世界平和のため 働くための活力をやしなう必需品じゃ」
「レクリエーションがなけりゃ 働く意欲はわかんよ ちみ!!」
これ!この台詞がききたかった!!
よくぞ言ってくれた、兜のオヤジ!
また、注目して貰いたいのが、吾作作品お馴染みの二人称単数形 「ちみ」
いいなあ、「ちみ」。「ちみぃ〜」とか。

極めつけは、主人公達の境遇。
ヘビィだぜ。

主人公、剣鉄也がみなしごだろ。
ヒロイン、炎ジュンもみなしご、その上黒人との混血だぜ? 知ってた?
俺も知らなかったんだよ。たぶん、豪と吾作が居酒屋とかで 酔っ払ってさあ、

「吾作さん、今度グレートの漫画よろしくね。」
「それよかさあ、豪ちゃん。このヒロイン随分色黒だねえ。」
「うん。気の強いヒロインにしたくって。いなかったでしょ? 今迄、そういう娘は。」
「いいねえ。あ、そうだ。じゃ、いっそのことハーフに しちまえ!な?いいだろ、豪ちゃん!!」
「・・・・」
とかいう会話があったに違いないよ。しかも人知れずにな。

劇中では、ジュンをみた通りすがりの若者たちが、

「へへへ。たまにはハーフの女の子とつきあってみてーな。」
「へっ。俺は絶対白い女の子のほうがいいぜ。」
「あんな女たいした事ないぜ。よせよせ。」
「ははははは」
と爽やかな会話を交わします。

そして仕舞いにゃ、ミケーネの口車にひっかかった日本人達に よって日本を追い出されるはめになる科学要塞研究所の方々。
こいつぁ、どろろ&百鬼丸若しくは神ファミリー状態。

まったくもって、何時の世も、何処の世界も 世間の風は冷てぇぜ。
言っておくけど、「世間」って、お前等俺等の事だかんな?
忘れるなよ?

そして、疾風怒濤の勢いで迎える結末、平和の為に命を賭けた 主人公達の末路は・・・
貴様が己が眼で確認しろ。

最後に、当時の表現そのままに復刻した双葉社。
朕が褒めて遣わす。


戻る