物言いたげなキリスト




キリストの朝に未遂の辛夷かな

桜咲く頃や狐の紙芝居

春風や嘘という名のコミュニケーション

まちがえし道のほとりの犬ふぐり

初蛙ガンジス河を泳ぎだす

耳朶を染めるものあり花の宴

みな同じヴァイオリンを弾く春の谷

ひとりでにネクタイ伸びる春の宵

飄々と五月の朝を聖バーナード

梅雨空へ只管打坐するカエルかな

ひたひたと異形の者ゆく木下闇

南瓜よ物言いたげなキリストよ

六月の馬と目が合う別れかな

幻と石に刻んで汗拭う

青空に審判席の高く哀しく

滝壷に少年ひそむ半夏生

乳母車空っぽのまま百日紅

熱血の人老いて啼く青葉木菟

歯黒蜻蛉や庭に転がる叔父の杖

その雲の素性は問わず浜昼顔

芋の子を洗うプールへ黒揚羽

首斬れば雲が噴きだすカンナかな

新涼やビルの谷間に猫の足

水底に事件が起きる良夜かな

金木犀や遊動円木ひとりでに

晩秋の大観覧車のひとりごと

柿食えば知らんふりする伊予の猫

そぞろ寒暁のロビーの外国語

ふと近く霜の朝の汽笛かな

食いしばる歯も欠けていて寒夕焼

水鳥を統べるカラスや杭の先

午前五時五十五分の氷柱かな

サヨナラは大根の肌に彫りました

教えます最後に笑うのは大根です

新年の切っ先くわえ我が狂女

雪暮れる子供を置いてきたように

ねんねこの双生児首出す雪明かり

如月の空を横切る鰐の口


目次
神々のタップダンス
風のしっぽ
レーテの舌
夜の河
まんきん丹抄
物言いたげなキリストhon


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