風のしっぽ




百年の孤独の空の葱坊主

捨て猫をまた捨てにゆく春の汽車

「笑う水/水の唇」ねこやなぎ

春暁やチベット僧は泥の中

花の夜言葉を踏ませる鬼がいて

春の蚊も囃されて刺す薪能

信号や夢より長き菜種梅雨

五種類のたばこ吸い分ける春の宵

殺し屋の故郷匂う五月闇

五月雨がめくる牡丹の記憶かな

振り向けば地中海燃ゆ蝸牛

風を捜せばホタルブクロに風のしっぽ

禅寺の和尚ほろ酔い風薫る

さ緑に2×4=8への道を訊く

闇を着て今を捨て身のヒキガエル

虚空よりなにをくわえて初燕

念仏の天井ゆれる青葉光

眼裏に木洩れ陽ひとつ水鶏です

口笛を頬いっぱいに夏の谷

万象の夏ひきつれて立葵

蝉しぐれ殺ぎおとす片方の耳

アロハシャツ着て植字工なつの雨

「ゆたかなれ」おらびてぐしゃりトマトかな

人間を土管がさがす炎暑かな

夏暁の音符くわえる雀の子

現在へ急転直下のゲンゴロウ

浄土よりくしゃみひとつ孔雀草

満月のエビ捕まって少し笑う

赤とんぼ精神科医の指の先

初秋の伊那の谷間のまんじゅう屋

すれ違う人ごとに会釈して秋が来る

濁点を風にさらわれ秋の蝉

天竜の風をあつめて赤とんぼ

十六夜のベンチに犬と大学生

秋澄んで伊予の国にも高い山

短足を亡父のように組んで秋

蓑虫や宇宙をあきらめて風の中

秋日傘風と腕くむ女あり

竜胆がうんと傾く巴塚

木曽塚に右往左往のとかげかな

やまなしや遠い小蟹の遠い夢

こおろぎに道なし風が道となる

三島氏と刻む墓碑あり萩の寺

そぞろ寒添い寝ほしがる山のなり

こおろぎや響きなつかしベンガル語

甲子園警察裏の銀杏の木

ハングルや黄ばみ加減の三国志

鳥渡る地方訛りのひとりごと

ぎゃあときてぽんと落としてゆりかもめ

星羽白北よりくれば北をむく

歳晩や袋の中身知らないまま

寒暁やまずは踏みだす右の足

哲学やアクロポリスの冬の猫

新年の空や巨岩の高笑い

凍て月や天に大きな牛の影

冬枯れて恋人岬という岬

木枯らしや畜産試験場裏の道

億年の恋打ち明ける冬の巨岩

凍空を流れて消えた流れ星

木枯らしの羅漢 三百年のばあ

如月の工事現場のしめ飾り

頤の先の先なる余寒かな


目次
神々のタップダンス
風のしっぽhon
レーテの舌
夜の河
まんきん丹抄
物言いたげなキリスト


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