<ボーイング>

737MAXの開発へ

 ボーイング社は去る8月30日の重役会で、737旅客機のエンジンを換装する発達型、737MAXの開発を決議した。この新しい737発達型については、最近までにエアライン5社から496機の予約注文を得ており、決議はそれに基づいてなされたもの。

 737MAXは単通路の旅客機として、同クラスの機材の中では燃料効率が最も高く、したがって経済性も最も高いと、ボーイング社はいう。さらに信頼性と整備性も顧客の期待に充分応えられる水準にあると。

 エンジンはCFMインターナショナルLEAP-1Bターボファンが2基。二酸化炭素(CO2)の排出量がきわめて少なく、燃料消費量も従来の同級機にくらべて16%減となり、年間8万トン近く少ない。金額にして8,500万ドルの節約になる。また競争相手のエアバスA320neoにくらべて、運航費は7%安いという。

 今回の737MAX開発の決断に至るまで、ボーイング社は737の後継機として全く新しい航空機の開発も考えていた。機体もエンジンも新しくすることによって、飛行性能や経済性を高めるという考え方で、今年5月頃にはその考えがほぼ固まりつつあった。ところが6月になって突然、エンジン換装のみということになって関係者を驚かせた。その方がリスクが少なく、顧客の希望する納入期限にも間に合わせることができるためという。引渡し開始は2017年の予定である。

 なお、現用737は、これまでに9,000機以上の注文を受けている。またボーイング社は737クラスの旅客機に対する需要は、今後20年間に23,000機以上と見ている。

 737の後継機を、ボーイング社が新たな機材の開発ではなくて、エンジン換装にとどめたのは、その背景に787の開発が遅れに遅れて、悩まされた事実がある。結局787は当初の計画から3年遅れとなってしまい、この9月ようやく量産1号機が出荷できることになった。

 このもようを、最近の英エコノミスト誌は、787が愛称のドリームライナーすなわち「夢の旅客機」ならぬ「悪夢の旅客機」(Nightmareliner)になったと書いている。しかも、型式証明の取得や引渡し開始によって問題が解消したわけではない。これから量産段階でもさまざまな問題にぶつかる恐れがあるいうのだ。

 ひとつは世界中でバラバラに行われている部品の製造が円滑に進むかどうか。開発の段階でも米ヴォート社や伊アレニア社の大きな製造ミスがあったり、ファスナーのような小さな部品の製造が間に合わなかったりした。

 にもかかわらず現在、ボーイング工場の外には外観だけは出来上がったように見える未完成機が30機以上も並んでおり、工場の中では10機の製造が続いている。このうち今年中に出荷されるのは、うまくいって7機というから、在庫ばかりが多くなる。金額にして、2009年末に170億ドルだった在庫が2010年末には240億ドルにまでふくれ上がってしまった。

 787の製造は月産10機で採算が合うと計算されているが、そうなるのは2013年末。開発段階を含めた経費からみれば、1,000機が売れなければ787計画は採算に合わない。

 787が夢の旅客機と呼ばれたのは複合材を多用することで機体を軽量化し、燃料効率が良くなるので運航費が安くなる。ということからエアラインの期待もふくらみ、一挙に1,000機近い注文を獲得した。メーカーとしてもプラスティックの胴体は組立が簡単と考えていた。しかし実際は、逆だったのである。まさかプラモデルと一緒にしていたわけではあるまいが。

 737MAXに話を戻すと、競争相手のエアバスA320neoはすでに1,200機の注文を獲得している。それを追って、737MAXがどこまで追い上げるか。再び三度び、ボーイング対エアバスの競争が始まった。

(西川 渉、2011.9.6)

 

【関連頁】

   ボーイング737後継機(2011.8.1)

表紙へ戻る