〜葵五郎ジャイアント創作の秘密〜
どのようにして、「葵五郎ジャイアント」が誕生したのか。
話はメチャメチャ。テンポは悪い。主演はど素人。合成はいいかげん。
なんとも救いがたい素人映画。それが我々の作品に下した評価だ。
しかし、その評価を裏切るかのように、なぜか我々に忘れがたいインパクトを
もたらす不思議なデジタル・ムービー「葵五郎ジャイアント」。
これは何か深遠なメッセージを持っているのかもしれない。
そして、我々の気付かない隠された意図があるのかもしれない。
そう勘ぐった取材班は、演出担当の佐分利実に接触することにした。
だが、彼はかたくなにその話に触れることを拒んだ。
「もう終わったことだから・・・。」そういうと彼は、苦笑ともあざけりとも
つかない
微妙な表情で我々を見た。
「いま2作目の準備で忙しいんだ。帰ってくれ。」
そういうと佐分利氏は、席を立った。
どうも正攻法ではだめなようだ。そこで我々はとある秘密のルートを通じて、
情報を仕入れることにした。
そして何日かたったころ、「佐分利のノートを手に入れた」という電話があっ
た。
そして取材班は佐分利氏が死蔵していた
「葵五郎ジャイアント」の企画ノートを入手することに成功した。
それがこれだ。

「こっ、これは・・・?!」
「解像度が低すぎる。くそっ」
「このままじゃ読めないっ!」
仕方ないな、拡大しよう。

「よ、読めない・・・っ」
「字が汚すぎるからだ」
どうやら、ここから「葵五郎ジャイアント」の企画が始まったのは間違いなさ
そうだ。
日付は96年の5月25日。
だいたいの筋書きはすでにこのとき決まっていたようだ。
「変身ソフト」「巨大人間」というキーワードもすでに見て取ることができる
。
注目して欲しいのは、そのタイトルだろう。
ここでは「田中一郎ジャイアント」となっている。
あまりに平凡な名前であろう。変更されたのは無理もない。
しかし、シナリオやコンテなどはないのだろうか。
撮影が開始されたのは、この後4週間後の6月17日だったらしい。
われわれは、主演の葵五郎本人に確認することにした。
「え?シナリオ??コンテとか?そんなのないよ」
まさかの答えが返ってきた。
「だって佐分利は、撮影当日までなんにも考えてなくってさ、
セリフだってみんな出演者が全部自分で考えたんだよ。」
「まったくさ、カメラ位置もなにもいいかげんなんだよね。
とある事務所の使ってないフロア借りたんだけど
それらしく見せるための準備からはじめて、
なにからなにまでみんな人にやらせるんだ。ずるいよね。」
「で、みんな俺たちキャストが考えてシーンをまとめてったっていうわけ。
だから、テンポ悪いなんていわれてもね。佐分利がやることやってないんだ
し、
もともと仕切る能力ないんだから、まあ予想すべき結果だったのかもしれな
いけどね。」
「何だかいいかげんなんだよね、真剣にやっても何度もリテイク出すし。
それで、セリフも人任せなんだよね、適当になんかしゃべってよって。
だから、あの作品のほとんどは俺たちキャストが考えたようなもんなんだよ
。
佐分利はなにもしない。見てただけ。(笑)」
「合成するパートの撮影なんかもいいかげんなんだ。ホワイトバランス間違え
て
まっ黄っきの画撮っちゃうしね。とりあえず格闘して、なんていわれてもね
。
地位も名誉もある社会人がそんな身もふたもないこと・・・。」
「ええっ??深遠なテーマ?作品の??ないよ、そんなの。
あるとしたら僕のかっこよさじゃない?(笑)
佐分利にそんな深いことができるわけないですよ。」
「とにかくさ、TECH誌に載ったからいいようなものの、そうじゃなかった
ら
あいつ半殺しだよね。
まあ、今後はもっとましなヤツに演出させるから、僕の活躍に期待しててね
。」
葵五郎は、このように語ってくれた。
取材班は拍子抜けした。
ようするに。
なにもなかったわけだ、われわれが勘ぐったものは。
しかし、気になるよな「葵五郎ジャイアント」ってやつは。
まだまだ隠された謎があるにちがいない。
そのすべてが明らかになるまでわれわれは謎を追い続けていく。
その経過報告は、この場でしていくつもりだ。
待っていてくれ給え。
取材:「葵五郎ジャイアント」ファンクラブ取材班